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 › わたむきホール虹ブログ › 美術ギャラリー › 【開催中】松村 勝 写真絵画展

2015年04月12日

【開催中】松村 勝 写真絵画展

みなさん、こんにちはface01
今年の桜は存分に楽しまれたでしょうか?
近年目にする光景ですが、
大きな街の、人の集まる場所で桜が咲くと
私達日本人と同様に、かなりの数の外国の方が
スマートフォンで撮影をされたりしています。
前に、日本に住む外国人の知人が
「春になると桜が綺麗だから、日本は最高だ」
と言っていました。
毎年、春先のこの季節、
私達は最高の場所で暮らしているのですねiconN36


さて、そんな綺麗な桜の一瞬の美を閉じ込めて
好きなときに眺めるための道具、
それが写真です。
現在、わたむき美術ギャラリーでは、
写真が“残されるもの”になるために
ある努力をされた写真家の方の展覧会を
開催しています。


松村勝 写真絵画展
~写真の美 後世に
 湖国の四季~

4月9日(木)~4月29日(水・祝)

【開催中】松村 勝 写真絵画展


“写真を後世に残す”ことを目的として
「写真絵画」という独自のジャンルを
開拓された栗東市在住の写真家、
松村勝さんの作品展です。
また、今回は
「地元日野の方と何かコラボレーションしたい」
という松村さんの希望により、
日野町にお住まいの山本良秀さんが育てられている
貴重な石楠花の鉢植えが、
会場の随所を彩っています。

【開催中】松村 勝 写真絵画展
(左が松村さん、右が山本さんです)

まずはじめに、松村さんが生み出した
「写真絵画」とは何かをご説明します。
写真のデータを、特殊な顔料プリンタで
油絵のキャンバス地に印刷します。
印刷された写真は、そのままではニュアンスに欠け
印刷の粗い部分も存在します。
そこに絵筆を使い、手彩色で精密な補正を加え
立体感、色調の美しさ、輪郭の明晰さを
表現していきます。

この技術は松村さん独自のもの。
また、徳島県にある大塚美術館の陶板画
(世界のあらゆる名画を原寸大で陶板画にしている)
の作成には、松村さんの技術が用いられています。

【開催中】松村 勝 写真絵画展
(一見普通の写真のようですが・・・)

【開催中】松村 勝 写真絵画展
(フラッシュを正面からたくと、キャンバス地の凹凸がわかります)

「写真絵画」の仕上がりは、
キャンバス地に印刷されたとは
思えないほどの透明感と鮮やかさに満ちたもの。
しかし、どうして松村さんは
普通に写真をプリントするのではなく
このような方法をとられるのでしょうか。



(松村さん)「昔、カメラマンになった時に
言われたんですね。
『写真というのは、劣化するから
 芸術品として美術館に置いてもらえません。
 写真家になっても、自分の作品を
 後世に残すことはできないのですよ』と。
 そこで、劣化しない印刷物はないか考えたんです」


“「写真はコマーシャルでしかない」
と言われたんです”

と松村さんは言われます。
“今そのとき”“生のもの”を次々にとらえるのが、
写真に求められることであり、
まして「もの」として後世に残せないのなら
芸術品にはならない、と。
「どこの国の美術館でもだめです。
 今、写真を収蔵している美術館は、
 個人が建てた記念館などではないでしょうか」


【開催中】松村 勝 写真絵画展

正直なところ、このお話には驚きました。
書店や図書館の美術書のコーナーに行けば、
“芸術”として撮影され、また扱われているに違いない
素晴らしい写真集がたくさんあります。
それなのに、美術館に写真は収蔵されないとは。


また、写真家の方は現像もご自身でされるので、
現像の仕上げかた自体もその方の技術や
芸術的な表現だと思っていました…と、
松村さんにお伝えすると、
松村さんは、戦後の写真がたどってきた歴史を
説明してくださいました。


「昔はネガがあって、現像液を使ってそれを
印画紙に焼きつけていたわけです。
それは写真家がしていました。
今その方法は、コストが高くついてしまいます。
私は昭和38年に、18歳でカメラマンになりましたが
最初はガラスの感板写真、次に白黒フィルム、
その次がネガフィルム、ポジカラー、
そして最新がデジタルと、
65年の間に、像を写真として記録する方法は
5代も交代しているんです。
ほぼ10年に1度、変わっている計算です」


デジタル全盛の現在、
私達は自宅で簡単にできるはずの
写真のプリント作業の手間さえ
惜しむようになってしまいました。

「次はどうなっていくのか…とにかく
“もの”としての写真には将来がない。
そう思ったとき、
キャンバスにしたら、なくならないのではと
考えました。
キャンバス地なら、絵画のように修復ができます。
実際どうなるかはわかりませんが
100年後も残そうと思えば残っている可能性がある。」


【開催中】松村 勝 写真絵画展


この「写真絵画」の技術は
手彩色の部分に非常な精密さと根気を要するそうです。
薄い色を何層にも何層にも重ねて彩色することで
肉眼で捉える光の反射を自然なものにし、
写真のもつ、つややかな表面を保ちつつも、
被写体が立体的に見える効果を生み出します。
まさにヨーロッパの古い絵画の修復のような作業。

そんな大変な工程をへてまで、
“100年後も残るものにしたい”
との思いをかけられる写真には
いったい何が写されているのでしょうか。


「後世に残すモチーフとしては
自然環境をね、これは永遠ではないものですから。
自分の住んでいる滋賀県の四季の風景を
最大限残そうと考えたんです。
そう決めたからには、
まずいい作品を撮らなければなりません」


“残すための写真”にふさわしい
その一瞬がやってくるのを求めて
写真家としての松村さんもまた、あらゆる努力を
撮影に注ぎ込まれます。
私達にはなじみ深く思われる風景の中に
最上の光と構図を求め、必要な情報収集をし、
高所からのアングルが必要であれば
脚立にも乗り続け、
気が遠くなるほどに時間をかけて
ベストの写真を撮影されているそうです。

【開催中】松村 勝 写真絵画展
(「この紫陽花の風景、ここもすでに変わってしまっているんですよ。この写真の通りの景色はもう存在しないんです」と、松村さんの奥様が教えてくださいました)

【開催中】松村 勝 写真絵画展
(「たとえばこのコハクチョウの写真、普通はこんな位置から撮れないんですよ。近づけない。どうやって撮ったと思いますか?“コハクチョウを守る会” の会長になったんです(笑)」と、松村さん。)


“写真を後世に残すこと”
大きなエネルギーを費やしてこられた
松村さん。
お話をお伺いしながら、いったい何が
松村さんを動かして
ここまでのお仕事をさせるのか…と
考えていました。

「“写真絵画”の技術開発には10年かかり、
身の回りのことが、やっと10年前ぐらいから
落ち着いてきました。
私は高いレベルの教育を受けていません。
もしそういうものがあれば、
他に人生の選択肢もあったかもしれないから、
きっと写真に対してここまでしていない。
自分のやることはこれと決めているからです。
“こんなこと”に自分の人生をかけられる人間は
他にいないと思いますから。」


“こんなことに人生をかけられる人間は
他にいないと思う”
と、仰る言葉が心に残りました。

「もし若い人が、何かでこういうこと
(「写真を残すこと」)が必要になったとき、
誰か、前にやった人がいて、方法が残っていると
非常にやりやすいと思うんです。
僕はいつまでも生きるわけじゃありませんから
(若い人のための)足跡をつけているというか」


今回賛助出品として展示してくださった
山本良秀さんの鉢植えを眺めながら
松村さんは仰いました。
「石楠花は咲くのに10年かかるそうですね。
僕と同じですね」


【開催中】松村 勝 写真絵画展

ヨーロッパには、
古いものを残していく文化があるといいます。
人々は何百年も前の建物や絵画を修復する
技術を学び、若い世代に受け継いでいます。
もちろん日本にもそういった修復の技術は
ありますが、
“後世に受け継いでいく精神”の面で
ヨーロッパの方がゆるぎないものを
持っているように思われます。
その精神とは、一言で言うと
「これを未来に手渡すのは自分だ」
という自覚を、一人ひとりが持っている
ということに、尽きるのではないでしょうか。

【開催中】松村 勝 写真絵画展

美しい風景の写真を眺めながら、
自分自身にとっての
「後世に残したいもの」は何なのかに
思いを巡らせたくなる展覧会です。
石楠花も美しく咲いていますので、
ぜひ一度、ご来場ください。

(4月14日(火)・21日(火)・28日(火)は休館日です)



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Posted by わたむきホール虹 at 16:07│Comments(0)美術ギャラリー
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