【開催中】杉野 由佳 細密画展

わたむきホール虹

2014年10月02日 20:56

みなさん、こんにちは
アジア大会、ご覧になられていますか?
滋賀出身のフェンシング太田選手、
シンクロ乾選手の活躍もとても嬉しかったのですが、
個人的には男女ともに日本選手が銅メダルを獲得した
「トランポリン」に魅せられてしまいました
空中での的確で美しい身体の動き、素敵ですよね。
今後注目していきたい競技になりました!

さて、秋のわたむき美術ギャラリー、
新しい展示がはじまりました。

杉野 由佳 細密画展
~身近な自然と
  出会える瞬間~

9月26日(金)~10月13日(月・祝)




高校卒業後、京都の専門学校で自然環境について学び、
野山でのフィールドワークの際、植物や生物の絵を描き
はじめたことから細密画を手がけるようになった、
杉野由佳さんの展覧会です。
現在はWWF(世界自然保護基金)ジャパンの会報に
絵を描くお仕事もされています。
杉野由佳さんはこの方です。




現在、小学校6年生になる息子さんのお母様でもある
杉野さん。
しかし、植物や小さな生き物の話になると、
好奇心に満ちた探検家のような、活き活きとした
表情になられるのがとても印象的でした。
そして杉野さんからお聞きする自然のお話が、
とにかく面白いのです。
私たちの足元に広がる「小さな世界」の不思議。
さっそくお届けしたいと思います!




まずは、「自然を写実的に描く」ということについて。

春に開催した、バラのボタニカルアート展の作家、
須田久仁子さんにお伺いしたことですが、
カメラのない時代には、植物や生物の絵が、
自然を研究するうえで、非常に重要だったそうです。

(杉野さん)「そうです。有名な話ではイギリスのキュー
ガーデンに、お抱えの絵師がいたというのがあります。
日本では、シーボルトが日本の絵師に、写実的な技法を伝えたといわれています。
植物の研究・観察のために描く絵としては、
“生態的”に描く方法と“標本的”に描く方法があります。
どちらにしても大切なことは
“嘘を描かない”ことなんですね」



“嘘を描かない”とは、
目の前にある対象そのものを忠実に描くということ、
と、杉野さんはひとまず定義されます。



(“ツユクサ”花の部分を抜き出して拡大してあります。雄しべと雌しべの長さがこんなに違うことに、今まで気づきませんでした。)


「でも、自然のものって個体差に幅があるんですよ。
普通、花びらが6枚の花なのに7枚ついているものと
遭遇してしまったら、
自分にその花の知識がないと、そのまま描いてしまう。
嘘をつかないとはいっても、絵にするときは、
その対象の“典型的な”形を描かないといけないので。
だから、絵を描く前にはあらかじめ対象について
調べておくんです」



特にWWFの連載では、会報発行時の季節の植物を
描くため、
制作している時点ではその植物が「季節に合わない」
ことがほとんどなのだそうです。
そこで、折を見てはさまざまな植物の姿を
いつもスケッチブックにストックされているのだとか。


「あの、写真ではわからないことが多いんですよ。
“がく”や“苞(ほう)”がどうなっているかとか、
雄しべや雌しべの“付け根”の部分がどうなってるか、
“軸”が巻いてるか、巻いてないかとか・・・。
描きとめておくと、あやふやな部分がなくなります」




(“シロツメクサ”。「“付け根”の部分。ここがどういう状態がしっかり描けていることが重要なんです」(杉野さん)」


記録のための道具として、
通常、私たちが信頼をおいているカメラ。
しかし、植物や小さな生物の細部をすみずみまで記録するには、ある部分に焦点を絞ることで、他の部分がぼやけてしまうのが難点なのだそうです。


また研究上“見たいもの”が、写真に写っていない
ことも多く、総合すると、
「人の目で見て絵に描かれたもの」の役割は
やはり大きいとのこと。
お話を伺っていると、私たちの“目”や“手”とは
非常に高性能の道具だったのだと気づかされます。


(「透明水彩で、白い絵の具を使わずに描く」というボタニカルアート。「上手い下手があるというより、最後は根気の世界だと思います。どこまで途中でいやにならずに描けるか、という」)


身近な植物や生き物を細部まで忠実に描いた
杉野さんの細密画。
今回の展示では、その数々の絵に加えて、
様々な昆虫の標本も展示されています。
こちらももちろん杉野さんが自ら作られたもの。
絵と同様“細部をじっと見たくなる”美しい仕上がりです。



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