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 › わたむきホール虹ブログ › 美術ギャラリー › 【開催中】薮田和義 スケッチ画展

2016年04月10日

【開催中】薮田和義 スケッチ画展

みなさん、こんにちは!kao_21
桜の季節もそろそろ終盤になってきましたね。
この時期になると、ほんの1~2日見ないうちに
ピンクの花びら一色の姿から
葉桜に変化している桜も増えてきます。
その有無を言わせぬ変化のスピードを
人間である私たちはただ受けいれるしか
ないんだなあ・・・と、思ったりもします。
しかし品種によってはまだまだ楽しめる桜も。
あともう少し、日本ならではの春の喜びを
満喫しましょう!


さて、美術ギャラリーで
新しい展覧会がはじまりました。

薮田和義 水彩スケッチ展
~湖国滋賀の心に響く
里山風景を求めて
晴描雨眠のスケッチ紀行~

4月7日(木)~4月24日(日)

【開催中】薮田和義 スケッチ画展


千葉県市川市生まれ、現在大津市在住の
薮田和義さんによる、
滋賀県下の風景を描いた水彩スケッチ展です。
薮田さんのお写真はこちら。

【開催中】薮田和義 スケッチ画展


2000年に退職されてから、
ずっと好きだった絵を描く毎日を
過ごしているという薮田さん。
滋賀県の風景を描くことにこだわって
車で県内中をめぐり、
細い道しかない場所に入るときは
その車から自転車を取り出して、
描きたい景色を探しにゆかれるそうです。

そのフットワークのように軽やかで自在な線と、
場所のもつ空気感を的確にとらえた色づかいで
描かれたスケッチ画について、
薮田さんにお話を伺いました。




(薮田さん)「僕はね、名所旧跡は描かないんです」


お話の最初に、薮田さんはまずそうおっしゃいました。


「これはね、蒲生(旧蒲生町 現東近江市)岡本の
ガリ版伝承館の裏にあるんだけど」


【開催中】薮田和義 スケッチ画展


―ガリ版伝承館も風情のある建物ですが、“裏”ですか。


「うん、“裏”のほうがいいんだよ。
この建物はもうなくなっちゃったんだね。
こういうもの、いいんだけどね・・・。
残っていかないかなと思うんだけど」


これも同じ、蒲生岡本の景色。

【開催中】薮田和義 スケッチ画展


「こっち側にあるこのかやぶき、
これも今はないんだよ。
この絵は2003年に描いたんだけど
この間行ったらなかったんだ」

【開催中】薮田和義 スケッチ画展
(絵の左上にかやぶき屋根がほんの少し、頭をのぞかせています)

今回展示していただいたスケッチ画には
全て、薮田さんがその風景と出会ったいきさつと
風景から何を感じたかを
300~400字程度のエッセイ風にまとめた
キャプションが添えられています。


この蒲生岡本の絵のキャプションでは
かやぶき屋根のなくなった現在の景色は
薮田さんにとっては
“わさび抜きのにぎりずしのよう”と
書かれてあります。
ユーモアを含みながらも、
無くなってしまったものを惜しむ気持ちや、
寂しさが伝わってくる表現です。




名所旧跡というものを描かない薮田さんが
車と自転車を駆使して捜し求める場所とは
表立って紹介されることのない
無名の景色でありながら
人の心の中にさりげなくも忘れがたい
「絵」として刻まれる場所。


ところが、そんな「絵になる」場所は
近年、急激な変化を遂げているのだと
薮田さんは感じていらっしゃるのです。

【開催中】薮田和義 スケッチ画展


「これは上仰木の棚田だね。
珍しく全部(稲で)埋まっていると思って
描いたんだよ」

―仰木の棚田も空いているところがあるのですか。

「そう。ところどころ、ちょうど
シャッター商店街みたいに。
やはり田んぼが空いてしまっていると
絵に描くのはね・・・。」



【開催中】薮田和義 スケッチ画展


「ここはマキノの奥にある在原っていう場所。
かやぶきの家にまだ普通に人が住んでいるっていう
貴重な場所なんだね。
ただ、人は減っている。
雪が深いから、人の住んでいない家は
そのうち崩れてしまうしかない」


いわゆる「近代化」「都市化」の大きな波が
押し寄せる場所からわずかに外にあったことで
以前からの生活のかたちが残されてきた土地に、
いま、本格的な危機が訪れていることを
薮田さんはスケッチの旅で目の当たりに
されています。
そして、その危機をとりまく、
この時代独特の空気感がどんなものであるか
絵を描く人ならではのこんな言葉で表現されます。


「今は“調和”を大事にしないね」


薮田さんの心に焦点を結ぶ
“絵になる”景色とはすなわち、
“そこにあるものが互いに調和している”
様子を感じられる眺め
のこと。
その調和は何によって支えられていると
薮田さんは考えているのでしょうか。




「外国の人に訊くと、
昔の日本の農村風景のことを
“こんなに美しいものはない”と言うんです。
自然と人間が共存していることが美しいと。
それが破られたのは・・・戦後の復興で
生きるのに精一杯だったことも
あるのかもしれないけど・・・。
僕の子どもの頃なんかは、地域住民の
密着度が高かったね。
昔は晴れた日に畳を干して、
竹でたたいてほこりを払うんだけど
それは近所中みんなで決めて同じ日に
やったんだよ」


【開催中】薮田和義 スケッチ画展


「あと、子どもの頃は僕らは
“家の中にいたらだめ。外で遊びなさい”
と言われていたね。
だから、道が遊び場だった。
そうやっていたから、自然と
自分の住んでいるところに愛着を
持っていたというかね。
もちろん、日本の昔の村の親密さには
村八分みたいなものも生んでしまう
ネガティブな側面もあったわけだけど」


「自然との共存」は、今では私たちにとって
とても難しい課題となってしまいました。
しかし、そう遠くない過去には
その「共存」の重みを背負いながら
当たり前に日常が営まれていたのです。
手間や労力を必要とする暮らしを
底から支えていたのは
薮田さんの言われる、幼い頃から育まれた
“自分の住んでいるところへの愛着”であり、
周りの景色を日々感じることで生まれる
“自分たちは全体の中の一部である”という
語らずとも共有できた世界観だったのかも
しれません。


現代の40歳代以下の世代では
土地の材料を使わなくても建てられる
工業化住宅が建ちならび、
人の住む家や店舗やビルは
持ち主の事情や必要性、あるいは
好みに沿って外観が作られているが、
周囲の自然や、街並みとのバランスからは
ばらばらに孤立している感じがするのが
子どもの頃から見てきた景色・・・という人が
大半を占めるのではないでしょうか。


それは一概に否定されるべきものではなく
やはり皆が幸福な暮らしを築くため努力して
作り上げてきた景色には違いないのですが、
それでも薮田さんの言われる
「調和」という言葉には、
様々なことを考えさせる重みがあります。

【開催中】薮田和義 スケッチ画展



日本は変な国ですよ、一方では休耕田が多く
一方では食料自給率がこんなに低い。
でもね、やはり子どもの頃から考える
というような方向にしていかないとね、
そう言われたあと、薮田さんは続けて

「自分たちのいるところを住みよい場所にして
周りに住む人と仲良くして、
愛着をもつということ、
これが大事なことなんだと思う」
と添えられました。


“あなたの育ってきた場所の絵を描いて”
誰かに頼まれることがあったとしたら
自分はどんな絵を描くのだろう?
会場に展示された薮田さんの作品を見ながら
時折考えてしまいます。
今はもうこの通りではない景色。
もうじきなくなるかもしれない景色。
知らない場所なのに、
どこか知っている気がする景色・・・。
薮田さんが描いた様々な実在の「景色」に
ぜひ会場で出会っていただき、
自由に思いを巡らせてみてください。

【開催中】薮田和義 スケッチ画展

(今回の展示のために、日野町の風景も数点スケッチしてくださいました。これは仁本木地区のとある場所とのこと)


(4月12日(火)・19日(火)は休館日です)








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Posted by わたむきホール虹 at 13:26│Comments(0)美術ギャラリー
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