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 › わたむきホール虹ブログ › 美術ギャラリー › 【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展

2015年09月21日

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展

みなさん、こんにちはface02
季節はあっと言う間に秋momiji
今は稲刈りと新米の季節でもあります。
真っ白でぴかぴかの滋賀県産の新米、
これはやっぱり
他所に自慢したい美味しさですよね!kao01


さて、人々がひとしきり稲刈りを終えたあと、
続いてある植物の刈り取りの風景が
かつて日本中のあちらこちらで
まさに秋の風物詩として
見受けられたのでした。
その植物とは、「葦(ヨシ)」


現在、わたむき美術ギャラリーでは
「ヨシ」を画材として用い、スケッチされた
日野町の風景をご覧頂くことができます。


井上弘と仲間達 葦ペン画展
~歴史や文化、豊かな自然環境の
日野町を描く!~

9月17日(木)
~10月4日(日)


【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展


ペン画の制作活動をされている
井上弘(ひろむ)さん
井上さんを中心に5年前結成された、
“葦ペンスケッチ同好会”の皆さんの展覧会です。


“葦ペンスケッチ同好会”の皆さんの活動は、
琵琶湖の水質を守る役目を担うヨシでできた
「葦ペン」を使って、
滋賀県下のあらゆる風景を描きに出かけるほか、
葦ペンの体験教室も開催する、というもの。


この展覧会に合わせ、同好会の皆さんは
4月11日と5月9日に日野町内を巡り
日野の代名詞ともいえる古い街並みから
町内在住者でも訪れる機会の少ない場所までを
素敵なスケッチ画にとどめてくださいました。


その時のこと、またヨシと琵琶湖の現在、
自然環境への思いについてなど、
さまざまなお話を
井上さんにお伺いしました。

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展
(この方が井上弘さんです)




会場内に展示された数々の作品。
ごく一部をのぞき、全て葦ペンを用いて
描かれたものです。


描き手の個性や、
何を描きたいかによって、
ヨシで描く線が様々なニュアンスを
表現できることに驚かされます。

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展


―思っている以上に、線が綺麗に描けるものなんですね。

(井上さん)「そうですね・・・葦ペンってね、こういうものなんですよ」

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展


―羽根ペンみたいに
インクを先につけて描くのですね。
皆さんの作品を見せていただくと、
線が太かったり細かったりしますが。



「もっと細くも、太くもできますよ。
出したい線に合せてヨシを削ればいいだけですから。
筆を束ねて、点描みたいな使い方も、
刷毛のようにも使えますね。
画材としては、ゴッホも葦ペンを使ってたんです」



“ペン”としてのヨシの歴史は
実はとても古く、
紀元前に遡るといいます。
当時の高官たちは
粘土板にヨシでアラビア文字を書き、
コミュニケーションや交易の
手段にしていたそうです。
ちなみに、数学者パスカルの有名な言葉
「人間は考える葦(あし)である」
この“葦(あし)”とはヨシのことです。


そしてヨシはまた、
古来より紙の原料でもありました。
ただし、現在はその役目のほとんどを
パルプにとって代わられています。


【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展

「これはヨシ紙です。
今回の作品は全てヨシ紙に描いています。
この用紙はヨシを55%使用しているのですが
10年ほど時間をかけて開発されています。
琵琶湖の環境問題の観点から
ヨシ利用の方法のひとつとして作られたんですね」



もともと、ドローイングペンを用いた
精緻なペン画を制作していた井上さん。
今回も数点、ドローイングペンでの作品を
出展されています。
作品を見るとその筆力に驚かされるのですが

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展

井上さんのお話のエネルギーは
ご自身の画についてではなく
あくまで「ヨシ」「自然環境」
向けられていきます。



「日本という国は、
“豊葦原瑞穂国”
(とよあしはらのみずほのくに)
と呼ばれていたぐらい、
昔は水辺のあるところには
どこでも、ヨシが生えていたんです。
そして、ヨシ簀(ず)や夏場の建具など
日常生活にヨシが利用されていました」



「ところが、生活環境の変化とともに
安い中国のヨシを使ったり、
エアコンがあれば建具など要らなくなったりして
ヨシが必要とされなくなってきました」


【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展
(日野川ダムと綿向山。豊かな水のある景色は、日野町に暮らす私たちにとっても心象風景に織り込まれているものです)


「ヨシは毎年生えてきて、
刈らないといいヨシができないんです。
刈ったヨシは昔なら使い道があったわけですが、
今は生活の形が変わってしまった。
ただ、ここ10~15年ほどは
企業の中にも、利用法を考えるところが
出てきているようですが。
葦ペンやヨシ紙で画を描くのは、
ヨシに意識を向けてもらうこと、
ヨシに価値観を持ってもらうことを
目的としてやっていることなんです」


【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展
(「筆記具の元祖」ともいえる葦ペン。こんな力強い線も表現できます)



ここ20年ほど、琵琶湖の水質や生態系が
健やかであることの象徴として
取りあげられることが多くなったヨシ。
ヨシ笛は滋賀県ではすっかりおなじみの
楽器となり、
雑貨から食品まで、さまざまなものに
ヨシを活用することが試みられてきました。
しかし、ヨシは私達が思うよりずっと昔から
人間の暮らしにいつも寄り添い、
私達の歴史を見つめてきたのです。




さて今回、日野町をスケッチしてくださった
井上さんと同好会の皆さん。
日野という場所には、どんな印象を
お持ちになったのでしょうか。

【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展


「自然が豊かで、緑が多いですね。
日野は、歴史と、文化と、自然のある場所です。
そして、山がありますね。
山というのは、琵琶湖の源流なんです」



―日野町は内陸にあるので、
なかなか直接琵琶湖の姿に
接する機会も少ないのですが、
山を通じて琵琶湖とつながっている、と・・・。



「今回は熊野集落に出かけて
スケッチをしましたが
なぜ熊野なのかというと、
綿向山がある熊野、そして蔵王ダム、
日野川、琵琶湖・・・と
水の流れでつながっている。
私達は湖国の原風景を
探し求めて描いているんです。
山、川、湖はつながっているものですが
最近ではそのバランスが崩れてきました」


【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展


「熊野は17件しかない集落ですが
そこで棚田を守っておられます。
“お米を食べてくれた人が美味しいと
言ってくれるのが嬉しい”と言われてね。
頭が下がります。
こうして画を描きにいくと
現地の方と直接お話が
できたりしますので・・・」



【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展
(日野町在住者でもなかなか訪れることの少ない熊野集落。
美しい棚田の風景が保持されるのは、それを続ける方々がいるからこそ)



山と水の営みに直接参加している
農耕の形が、棚田。
熊野集落で続けられる棚田の姿は、
滋賀県に住むものは誰でも必ず
琵琶湖とつながっているということの
象徴でもあるようです。




最後に、来場される方へのメッセージを
いただきました。


「自然の環境と
琵琶湖のシンボルでもある
ヨシを使って、
画を描かせていただいているという
それだけなんですけどね・・・。
滋賀県は山に囲まれていて
400本以上の川があるので
山と琵琶湖のつながりは
どの場所に行ってもあるんです。
そのことをこれからも
描いていきたいです」





周囲を山に囲まれ
川に沿って平野ができ、
その中心に大きな湖を抱える。
滋賀県という場所は、
人間の暮らしにとって非常に調和のとれた
理想的な地形であるといえます。


そして中心に湛えられる琵琶湖は
私達の生活に欠かせない水源であると同時に
“1つの湖を囲んで暮らしている”という
心の中のイメージ、象徴としても
非常に大切なものです。


これから先の100年、200年を
私達滋賀県民は、琵琶湖とともに
どんな暮らしかたをしていくのか。
琵琶湖のヨシは今、
ペンや楽器に姿を変えながら
静かにその行方を
見守っているのかもしれません。
ヨシで描かれた日野町、また滋賀の原風景を
ぜひゆっくりとご覧になってください。


【開催中】井上弘と仲間達 葦ペン画展



(9月22日(火)、23日(水)、
24日(木)、25日(金)、29日(火)は
休館となります)


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Posted by わたむきホール虹 at 16:47│Comments(0)美術ギャラリー
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