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【日野町町民会館わたむきホール虹】を
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 › わたむきホール虹ブログ › 2014年06月

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Posted by 滋賀咲くブログ at

2014年06月22日

【開催中】吉村順三 油彩画展

みなさん、こんにちは!
今は何といっても、ワールドカップサッカーが気になる毎日。
日本代表の蹴ったボールがネットを揺らすシーンを
日本代表が試合に勝った喜びを全身で表すシーンを
見・た・いkao02kao02ですよね~!

さて、わたむき美術ギャラリー
新しい展覧会の話題です。

吉村順三 油彩画展
~油彩と水彩の風景・人物画展~
6月19日(木)~7月6日(日)


退職後、釣りの合間に描いていた絵に、
いつの間にか真剣に取り組むようになっていた、という
吉村順三さんの“油彩画展”です。
吉村順三さんのお写真はこちら。



“油彩画”とは、油絵と水彩画の両方の画材、
また技法を用いて描く吉村さん独特の方法です。
準備と後始末が大変で、油の匂いもこもる油絵。
そこで始末がしやすい水彩を同じ絵の中に
取り入れてみたのだとか。
「僕の絵は“油的水彩”というか。
 油に負けないように水彩で描いたら、
 どこまで描けるか、という」


油絵の具は上にどんどん乗せていくことで
質感を出しますが、
水彩は重ねるとにごる。
油絵の影響を強く受けていた吉村さんには
最初水彩の扱いが難しかったそうですが、
最近は「要領を得てきた」そう。

水彩の透明感と、油絵の落ち着き、深み。
吉村さんの絵の上では、相反する2つの要素が
バランスよく調和しています。


吉村さんは本格的に絵を始めて8年になるそうです。
「最初は風景画から入ったんです。」

「左は旧安土町。右は長野県の白馬。
近くから遠くまで、色々な場所に出かけていって
絵を描いています。
僕はじっとしてるのが性に合わないから」



「これは近江八幡の円山。3年ぐらい前に描いた。
この風景をものにしたくて必死で通って」


「で、そういう景色を夢中になって描いてると
妻が『またそんなのばっかり描いて』って言うから
こういうのも描いてみたの」



絵のモチーフは、
“単純に描きたいもの。これ描いたら絵になるかなと
思うもの”
だという吉村さん。
「退職後のひまつぶしなんですよ。
退職後に空いた自分の世界を絵で埋めている」

吉村さんはそう仰いますが、
どの絵にも、まるで人に会った時のように
何か心に残る、どこか忘れがたい印象が
宿っている気がします。


そんな吉村さんが、4年前から挑戦されているのが
人物画の世界です。
プロのモデルの方に依頼し、
“人を描く”ことに正面から取り組んだ作品の数々が、
今回展示されています。



「人物で難しいのは光と影。立体感。
今、人物画は先生について習っていますが
明るいところと暗いところ、
それを表現するようにと言われている」


会場にある全ての人物画は女性を描いたもの。
この記事を担当する私も女性ですが、
吉村さんの描く女性の肖像はどれも、
背景に物語を感じることができ、
その女性の芯にある強さと美しさ、そして知性が
伝わってくる気がします。



こんな風に描かれた女性の肖像を見ると
勇気づけられ、嬉しくなります。


「…僕はそんな風な女性の絵が描きたくて、
女性の大人の生き様の表現というか
うれしいのか悲しいのか、
この女性が持っている何かを意識して見て
絵を描いています。
あとは人物の持つ質感を大事に」



おや、プロのモデルさんではない女性の絵が。



「孫を描きたいと思って。
でも、似てないと家族から評判が悪い。
だからとにかく必死で描いた」


吉村さんにとっては可愛いお孫さん。近しい存在。
しかし、その姿を“絵にする”ことは
姿勢を正してかからなければならない真剣勝負。
お孫さんの姿が、普遍的な美しさを持つ
「人物の肖像画」となった素敵な作品です。


吉村さんは、現役時代はデザイナーのお仕事を
なさっていたそうです。
そのため、「デッサンの心得はあった」のだとか。
ある時、人から、
“40歳ぐらいから自分の趣味を持たないといけない。
退職してからでは遅い”
と言われたことが印象に残った、と仰います。

「ぼくは絵を描いて時間をつぶすんです。
じっとしていられない性質だから、足腰が動く間は
風景画を描きに行って、
人物は、足が動かなくなってきたときのためにも
描く練習をしておきたい」


絵というものは退職後から始めても、
なかなか続かないで、みんなやめちゃうんだ、
既に心得があって上手い人の絵と、
自分の絵を比べて、嫌になっちゃうんだね…。
吉村さんはそんな風に話してくださいました。
趣味程度に、と思って始めたことでも
何かを表現するのは楽しみと同時に
苦しさも味わう作業。
しかし、そこを越えれば、
自分の作品が様々な人の心に何かを呼び起こす
新しい世界のドアが開くのかもしれません。




最後に、会場にいらっしゃる方に
メッセージをいただきました。
「絵に題名がないけれど、その理由は、
僕の絵ってそんなに難しくないもので、
風景なら、見たらどの場所かわかるから。
見てくれる人が、単純にああきれいだな、と
思ってくだされば、
僕の絵はそれでいいんじゃないかと思います」



ずっと謙遜気味に
ご自身の絵について話された吉村さん。
しかし、会場を一周すると、
“絵を描くことは、本当に素敵なこと”という思いが
心のなかに残ります。
ぜひご覧になっていただきたい展覧会です。

(6月24日(火)、7月1日(火)と4日(金)は休館日です)


   


Posted by わたむきホール虹 at 17:49Comments(0)美術ギャラリー

2014年06月02日

【開催中】村瀬進 植物水彩画 一木一草展

みなさん、こんにちはface01
すっかり夏のような暑さ、冷たい物が美味しいですねアイス
とはいえ、急な気温の変化で体調を崩されませんよう。
旬の食べもの(今は豆ごはんでしょうか?kao_10)を食べて、
夏本番を迎える身体をつくりましょう!

わたむきホール虹は、暑さにも負けず元気です。
美術ギャラリーで、新しい展覧会がはじまりました。

村瀬進 植物水彩画 一木一草展
~草花との出会いを
描く・書く・つなぐ~

5月29日(木)~6月15日(日)



多賀町にて図書館長を務められた後、
退職後、趣味として始められた植物水彩画で、
2冊の書籍を出版された
村瀬進さんの展覧会です。

村瀬さんのお写真はこちら↓


今回のギャラリー展示、まず圧巻なのは、
その作品数の多さです。
なんと75点もの絵が所狭しと
ギャラリーの壁に並んでいます。




1枚の絵には1種類の植物の絵。
的確で軽やかな線と、草花のみずみずしさを
写しとったような水彩の彩色が、
目に喜びをくれるようです。


(「フキノトウ」。地下茎も描かれています)

また、村瀬さんの植物水彩画には全て、
丁寧なキャプションが添えられています。
このキャプションも、今回の展示の大きな魅力です。
内容は、描かれている植物の紹介にはじまり、
植物に触発されて思いだされるエピソード、
そして、植物が登場する様々な本の記憶が
綴られています。


(キャプション中、本のタイトルが登場する部分には下線が引いてあります。興味のある本の名前はぜひ憶えていってくださいね!)

目と心、その両方に豊かな広がりをもらえる
今回の展示。
作者の村瀬さんにお話を伺ってみました。


-線が軽やかで、見ていると楽しくなるのですが。

「いや、実は乱視で、線が二重に見えて
見にくいんですよ。
屋外の自然光のもとでならまだいいんですが・・・」


-色もみずみずしくて、気持ちいい感じがします。

「色は…あの、一番難しいのは緑ですね。
花の数だけ緑色が違うんですよ。
一つの植物の緑を描くのに、平均5~6色使います。
使っているのは12色入りの、
子ども用の水彩絵の具なんですけどね(笑)」


軽やかで、すんなりと心に入ってくる村瀬さんの水彩画。
しかし描くのには1枚に平均2時間、
どんなに小さな絵でも1時間半はかかるのだそうです。


(ドクダミは村瀬さんにとって魅力的な対象。何も描くものがないと「ドクダミか、赤まんまか、ねこじゃらし」を描かれるそうです。ドクダミには八重の花もあるとか。見つけてみたいです!)

植物といえば、村瀬さんが図書館のお仕事をされた
多賀町のあたりは、希少な山野草が自生する場所だと
思いますが…。

「そうなんですけれどもね。その時期は忙しくて…。
多賀町では1枚しか絵を描いていないんですよ。
残念なことなんですが。
退職してから絵が描けるようになって、
1年に200枚ほど描いていました。
最近ではさすがに少しゆったりしてきましたが」


そして村瀬さんは、ご自身が植物画に興味を持った
きっかけについて、お話をしてくださいました。

「高校の選択授業で、美術を選択したんですね。
理由はたいしたものじゃなくて、他の科目に比べて
一番『期限にしばられないんじゃないか』と(笑)。
その美術の先生が、生徒に課題を与えたら、
自分はひとり、彫塑ばっかりやってるような先生でね。
その課題っていうのが、
“1時間に20枚植物の絵を描くこと”だったんです」



(「セロリ」。丁寧に描かれた線を見ていると、セロリが魅力的な形をした植物だということに気づきます)

「20枚も植物の絵を描くなんて大変だから、
自分はオオバコの葉っぱばかり描いていたんですが、
そのとき、葉っぱが1枚ずつ違うのが、
おもしろいなと思いましたね。
退職して絵を始める以前に、絵をやっていた経験と
いうのは、高校のその時が最後なんですよ」


-では、退職されてから絵をはじめられたのも、
 その美術の授業の記憶があって…。


「ええ。
その時感じた『おもしろさ』は、忘れなかったですね」



(「ムラサキツユクサ」。ツユクサはよく“雑草”扱いされますが、美しい花ですね)


高校の授業から40年以上の時をへて
実際に形をとることとなった“おもしろさ”の記憶。
人生には、まるで物語のように、
次の展開につながる伏線が張られてあるのかも・・・。
そんな風に思える素敵なお話です。


また、展覧会のもうひとつの魅力である
キャプションの文章について、
文中に数多く紹介される「本」の楽しみというものを、
村瀬さんにぜひ、お伺いしてみたいと思いました。


-今の時代は、特に紙でできた「本」というものが、
少し肩身が狭い立場に置かれていると思います。
「本」の良さとは何でしょうか。


「本の良さとは…例えば今メモを取っておられますね。
何か考えながら書かれているはずです。
人は何でものを考えるのでしょうか?
言葉です。人は言葉でしかものを考えられません」


-ええ。

「言葉が豊かになると、考えることが豊かになります。
私の展示では、必ずキャプションを添えてくださいと
お願いしています。
絵だけ見る方も、キャプションの方を読まれる方も
いらっしゃいますが…、
両方あることで、より豊かなものを感じて頂けると
思います。
やはり言葉も楽しんでほしい。
言葉で考える訓練をする、
言葉で考える力をつける営みを助けるもの、
それが本だと思います」



(「サルトリイバラ」。村瀬さんも山野に自生するものにはほとんど出会わないそうですが、東近江市の図書館内に活けてあるサルトリイバラに、偶然遭遇したことがあるそうです)

“言葉で考える力”について、
村瀬さんは、歌手の一青窈さんのエピソードを
話してくださいました。

「一青窈さんは、子どものころ毎日、お父さんに
手紙を書いていたのだそうです。
彼女は谷川俊太郎さんの「ことばあそびうた」で
言葉のリズムのたのしさにふれ、
それが愛読書だったそうです。
ところが小学校2年の時にお父さんは亡くなり、
手紙の行き先はなくなってしまいます。
後に、小学校の高学年で宮沢賢治の詩集に出会い
詩を書くことを意識したそうです。
一青窈さんの歌詞の言葉は、すばらしいと私は思う
のですが、
彼女のこの話には、“読む・考える・書く”ことが
人の“生きていく力”につながることが
表れていると思います」



(「ハナミズキ」の絵。もちろんキャプション中には一青窈さんのお名前も挙がっています!)

図書館を巡ることと、インターネットでの検索の違い。
それは、図書館では目的の本を探し当てると同時に、
その横に並ぶ多くの同じジャンルの本との出会いが
あることだと、村瀬さんは仰います。
ものとしてじかに手に取れる“紙の本”との出会いは、
そこに収められた言葉をより深く
記憶に刻んでくれる気がします。


最後に、会場にいらっしゃる方への
メッセージを頂きました。


「絵が飾ってあるだけでなく、本の紹介も
していますし、
いろんなキャプションを読んでもらって、
そこから自然環境に思いを巡らせていただくのも
ご自分の趣味を見つけていただくのもいい。
“豊かさ”を探してもらえたら、と思います」



今回の村瀬さんの展覧会は
「森」に似ていると思います。
たくさんの植物がそこにある「森」。
そして世界を開いてくれる数々の文章と、
様々な本に出会える、言葉の「森」。
森の中を歩くと、静かで充実したエネルギーが
自分の中に満ちてくるように、
村瀬さんの紡ぐ、絵と言葉の森には、
細胞が喜ぶような「豊かさ」が宿っているように
感じます。

必ず「何か」を受け取っていただける展覧会、
ぜひお越しください。

(6月3日(火)6日(金)10日(火)は休館日です)


(水彩画に興味をお持ちになった方のために、水彩画を始めるための道具案内なども掲示されてありますよ!)  


Posted by わたむきホール虹 at 08:43Comments(0)美術ギャラリー