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【日野町町民会館わたむきホール虹】を
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 › わたむきホール虹ブログ › 2014年06月02日

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Posted by 滋賀咲くブログ at

2014年06月02日

【開催中】村瀬進 植物水彩画 一木一草展

みなさん、こんにちはface01
すっかり夏のような暑さ、冷たい物が美味しいですねアイス
とはいえ、急な気温の変化で体調を崩されませんよう。
旬の食べもの(今は豆ごはんでしょうか?kao_10)を食べて、
夏本番を迎える身体をつくりましょう!

わたむきホール虹は、暑さにも負けず元気です。
美術ギャラリーで、新しい展覧会がはじまりました。

村瀬進 植物水彩画 一木一草展
~草花との出会いを
描く・書く・つなぐ~

5月29日(木)~6月15日(日)



多賀町にて図書館長を務められた後、
退職後、趣味として始められた植物水彩画で、
2冊の書籍を出版された
村瀬進さんの展覧会です。

村瀬さんのお写真はこちら↓


今回のギャラリー展示、まず圧巻なのは、
その作品数の多さです。
なんと75点もの絵が所狭しと
ギャラリーの壁に並んでいます。




1枚の絵には1種類の植物の絵。
的確で軽やかな線と、草花のみずみずしさを
写しとったような水彩の彩色が、
目に喜びをくれるようです。


(「フキノトウ」。地下茎も描かれています)

また、村瀬さんの植物水彩画には全て、
丁寧なキャプションが添えられています。
このキャプションも、今回の展示の大きな魅力です。
内容は、描かれている植物の紹介にはじまり、
植物に触発されて思いだされるエピソード、
そして、植物が登場する様々な本の記憶が
綴られています。


(キャプション中、本のタイトルが登場する部分には下線が引いてあります。興味のある本の名前はぜひ憶えていってくださいね!)

目と心、その両方に豊かな広がりをもらえる
今回の展示。
作者の村瀬さんにお話を伺ってみました。


-線が軽やかで、見ていると楽しくなるのですが。

「いや、実は乱視で、線が二重に見えて
見にくいんですよ。
屋外の自然光のもとでならまだいいんですが・・・」


-色もみずみずしくて、気持ちいい感じがします。

「色は…あの、一番難しいのは緑ですね。
花の数だけ緑色が違うんですよ。
一つの植物の緑を描くのに、平均5~6色使います。
使っているのは12色入りの、
子ども用の水彩絵の具なんですけどね(笑)」


軽やかで、すんなりと心に入ってくる村瀬さんの水彩画。
しかし描くのには1枚に平均2時間、
どんなに小さな絵でも1時間半はかかるのだそうです。


(ドクダミは村瀬さんにとって魅力的な対象。何も描くものがないと「ドクダミか、赤まんまか、ねこじゃらし」を描かれるそうです。ドクダミには八重の花もあるとか。見つけてみたいです!)

植物といえば、村瀬さんが図書館のお仕事をされた
多賀町のあたりは、希少な山野草が自生する場所だと
思いますが…。

「そうなんですけれどもね。その時期は忙しくて…。
多賀町では1枚しか絵を描いていないんですよ。
残念なことなんですが。
退職してから絵が描けるようになって、
1年に200枚ほど描いていました。
最近ではさすがに少しゆったりしてきましたが」


そして村瀬さんは、ご自身が植物画に興味を持った
きっかけについて、お話をしてくださいました。

「高校の選択授業で、美術を選択したんですね。
理由はたいしたものじゃなくて、他の科目に比べて
一番『期限にしばられないんじゃないか』と(笑)。
その美術の先生が、生徒に課題を与えたら、
自分はひとり、彫塑ばっかりやってるような先生でね。
その課題っていうのが、
“1時間に20枚植物の絵を描くこと”だったんです」



(「セロリ」。丁寧に描かれた線を見ていると、セロリが魅力的な形をした植物だということに気づきます)

「20枚も植物の絵を描くなんて大変だから、
自分はオオバコの葉っぱばかり描いていたんですが、
そのとき、葉っぱが1枚ずつ違うのが、
おもしろいなと思いましたね。
退職して絵を始める以前に、絵をやっていた経験と
いうのは、高校のその時が最後なんですよ」


-では、退職されてから絵をはじめられたのも、
 その美術の授業の記憶があって…。


「ええ。
その時感じた『おもしろさ』は、忘れなかったですね」



(「ムラサキツユクサ」。ツユクサはよく“雑草”扱いされますが、美しい花ですね)


高校の授業から40年以上の時をへて
実際に形をとることとなった“おもしろさ”の記憶。
人生には、まるで物語のように、
次の展開につながる伏線が張られてあるのかも・・・。
そんな風に思える素敵なお話です。


また、展覧会のもうひとつの魅力である
キャプションの文章について、
文中に数多く紹介される「本」の楽しみというものを、
村瀬さんにぜひ、お伺いしてみたいと思いました。


-今の時代は、特に紙でできた「本」というものが、
少し肩身が狭い立場に置かれていると思います。
「本」の良さとは何でしょうか。


「本の良さとは…例えば今メモを取っておられますね。
何か考えながら書かれているはずです。
人は何でものを考えるのでしょうか?
言葉です。人は言葉でしかものを考えられません」


-ええ。

「言葉が豊かになると、考えることが豊かになります。
私の展示では、必ずキャプションを添えてくださいと
お願いしています。
絵だけ見る方も、キャプションの方を読まれる方も
いらっしゃいますが…、
両方あることで、より豊かなものを感じて頂けると
思います。
やはり言葉も楽しんでほしい。
言葉で考える訓練をする、
言葉で考える力をつける営みを助けるもの、
それが本だと思います」



(「サルトリイバラ」。村瀬さんも山野に自生するものにはほとんど出会わないそうですが、東近江市の図書館内に活けてあるサルトリイバラに、偶然遭遇したことがあるそうです)

“言葉で考える力”について、
村瀬さんは、歌手の一青窈さんのエピソードを
話してくださいました。

「一青窈さんは、子どものころ毎日、お父さんに
手紙を書いていたのだそうです。
彼女は谷川俊太郎さんの「ことばあそびうた」で
言葉のリズムのたのしさにふれ、
それが愛読書だったそうです。
ところが小学校2年の時にお父さんは亡くなり、
手紙の行き先はなくなってしまいます。
後に、小学校の高学年で宮沢賢治の詩集に出会い
詩を書くことを意識したそうです。
一青窈さんの歌詞の言葉は、すばらしいと私は思う
のですが、
彼女のこの話には、“読む・考える・書く”ことが
人の“生きていく力”につながることが
表れていると思います」



(「ハナミズキ」の絵。もちろんキャプション中には一青窈さんのお名前も挙がっています!)

図書館を巡ることと、インターネットでの検索の違い。
それは、図書館では目的の本を探し当てると同時に、
その横に並ぶ多くの同じジャンルの本との出会いが
あることだと、村瀬さんは仰います。
ものとしてじかに手に取れる“紙の本”との出会いは、
そこに収められた言葉をより深く
記憶に刻んでくれる気がします。


最後に、会場にいらっしゃる方への
メッセージを頂きました。


「絵が飾ってあるだけでなく、本の紹介も
していますし、
いろんなキャプションを読んでもらって、
そこから自然環境に思いを巡らせていただくのも
ご自分の趣味を見つけていただくのもいい。
“豊かさ”を探してもらえたら、と思います」



今回の村瀬さんの展覧会は
「森」に似ていると思います。
たくさんの植物がそこにある「森」。
そして世界を開いてくれる数々の文章と、
様々な本に出会える、言葉の「森」。
森の中を歩くと、静かで充実したエネルギーが
自分の中に満ちてくるように、
村瀬さんの紡ぐ、絵と言葉の森には、
細胞が喜ぶような「豊かさ」が宿っているように
感じます。

必ず「何か」を受け取っていただける展覧会、
ぜひお越しください。

(6月3日(火)6日(金)10日(火)は休館日です)


(水彩画に興味をお持ちになった方のために、水彩画を始めるための道具案内なども掲示されてありますよ!)  


Posted by わたむきホール虹 at 08:43Comments(0)美術ギャラリー