2015年02月11日
【開催中】仁志出敬子 コンピューター・グラフィック展
みなさん、こんにちは!
いつの間にか節分が終わり、
“二十四節気”でいえば
「立春」を迎えているはずの今日この頃。
なのに…寒い!寒いです
春はすぐそこ、地面のすぐ下まで来ているのに。
冬の少しだけ寂しい気分と、
春を待ち望むわくわくした気持ちが
入り混じる今の季節の空気感に
とてもよく似合う展覧会をご紹介します。
仁志出敬子
コンピューター・グラフィック展
~心の中の生き物たち~
2月5日(木)~2月22日(日)

動物たち(時々擬人化されていたりします)や、
現実にあるもののようで
どこか非現実的な物たちを、
優しい色使いとユニークな画面構成で描く
仁志出敬子さんの展覧会です。
仁志出敬子さんはこの方です。

まず、「コンピューター・グラフィック」というと、
もしかすると緻密で、メカニックで、先鋭的な作風を
イメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが
仁志出さんの作品は「コンピューター」を
意識させることのない、温かで優しい印象です。
「そうですね、わざと手描きっぽくしている
ところはあります。
パソコンでなめらかな線を描くというのは、
相当熟練していないとできない技術ですね」
コンピューターを習い始めたのは、今から18年前という
仁志出さん。
デザインやテキスタイルのお仕事をされていた関係も
かねて習得された技術ですが、
「コンピューター」を使って作品制作をするということに
特別な意識はなく、
ただ制作に必要な道具として捉えておられるようです。
「パソコンは機械の一種ですよね。
いびつなものを修正できたりもしますが、
パソコンだからといってきちっと線が描けるわけでは
ないので…。
作品をご覧になった方に『切って貼ったんか?』と
訊かれることもあるんですけど(笑)
私自身はこういう描き方が好きなので」
そして、実際に作品を見ていただくと
否応なく惹きつけられるのが、
そこに描かれた、可愛くて、シュールで
不思議な世界です。

「よく『この絵には何か物語があるの?』って
訊かれたりするんですけど、
物語があって、それに絵をつけているんじゃないんです。
最初に視覚的なイメージがあって、絵を描きます。
ストーリーは後からついたりすることもありますが」
“こういうものを描こう”と、頭で考えて決めるより
心に浮かんだ視覚的なイメージを着想にされるという
仁志出さん。
たとえば、こちらの「心の中の生き物」というタイトルが
ついた一連の作品は、
浮かんだイメージをクロッキー帳に描きためておき、
何年か経って掘り起こしたものが描かれています。

物語から生まれる絵ではない。
でも、
「この絵は何かの物語を表わしているんじゃないか…」
そう推測したい方の気持もわかる気がする
というぐらい、
仁志出さんの作品は本当に、
見れば見るほどユニークで興味がつきません。
描かれている動物や人物が、ファンタジックでありながら
互いに絶妙な距離感を保っていることで生まれる
飄々としたユーモアのセンス。
現実からすれば突飛な光景が描かれているのに
絵の中の生き物たちは「いたって平常心」であることが
昔読んだ
“不思議の国のアリス”の世界を思い出させます。

―(笑)面白いです。なぜ動物たちはこのような形に…。
「“メビウスの輪”って、立体的に面白いと思って。
あと、“クラインの壷”ってありますよね。
そういう感じを作品に取り入れたくて。
輪の中に描いたのは、まあ
“うさぎとねこが永遠に追いかけっこをしている”
というか…(笑)」

―これは、左下の人物が“狼男”に
変身している最中かなと思ったのですが。
「いえ、イメージでは
“ピーターパンが影を身に着けている”
みたいな感じだったんですけど…」
―影ですか。そのただならぬ様子に
周りの動物たちも反応していますね。

―木になっている人物もインパクトがありますが、
周りに描かれてあるものも不思議です。
室内は夜のようなのに、窓の外は昼に見えたり。
あと、右側の大きなものさしとか、
左の壁から出ている足とか。
「そうですね…ものさしはあの、やはり背が伸びるということで…(笑)足は、ここにピンクのものが欲しかったんですけど、こう、足があったほうがいいかな…?と(笑)」
―(笑)
派手な見た目で注意をひく形ではなく
画面の細部に目をこらすほど、
じわじわとおかしさがこみあげてくるユーモアを
そなえた仁志出さんの作品たち。
「おかしいですよね。描いているときは別に
笑いを取ろうと思って描いていないんですけど…。
でも、自分でも笑えてきます(笑)」
コンピューターを使用し、独自の世界を描く
仁志出さんの作品群は、
わかりやすい形で「ジャンル分け」ができる
特徴をもたないため
これまで、様々な形に受け取られてきたそうです。

「『イラストレーターですか?』と訊かれることも
あるんですけれど、
“イラストレーター”の定義がわからなくて。
辞書で引くと、
“絵本の挿絵を描く人”“商業的な絵を描く人”
というような意味があったのですが、
この作品は、売るための絵ではないので…」
また、絵の中に登場する動物や人物やものの
大きさが現実とは異なっていたり、
いわゆる「遠近法」に沿っているといえない形で
あることについて、仁志出さんは、
「みんな対等に描いていて、絵の中のどれを強調
したくてというのが、あまりないんです」
と言われます。
あくまで私個人の感想ですが、
その感覚は、仁志出さんがデザインや
テキスタイルの制作を手がけられてきたことに
関係があるのかもと思いました。

最後に、来場される方にメッセージをいただきました。
「具体的で、でも写実的ではないという世界ですので
現実の固定観念にとらわれないで見てほしいと思います。
展示のタイトルにもある“心の中の生き物”として」
インタビュー中の仁志出さんの言葉に
反するようですが
私が仁志出さんの作品を見て連想したものは
「昔の児童書の挿絵作家の作品」でした。
デザイン性に優れながら、温かさとユーモアをそなえ、
決して「物語の説明」にならない豊かな挿絵の世界。
その絵は、読み手の想像力を縛るものではなく、
絵があることで物語は謎を深め、奥行きを増します。
観る側が心を開いてじっと見つめた分だけ、
中にある豊かな世界を教えてくれる、
そんな仁志出さんの作品世界をぜひ会場で
心ゆくまで時間をかけて
ご覧になっていただきたいです。

(仁志出さんの旦那様は2013年にこのギャラリーに出展していただいた仁志出孝春さんです。「ご主人様は作品を見て何と言われますか?」との質問に「こんな発想がいったいどこから来るのか不思議だ、って言います」)
(2月12日(木)・2月17日(火)は休館日です)
いつの間にか節分が終わり、
“二十四節気”でいえば
「立春」を迎えているはずの今日この頃。
なのに…寒い!寒いです

春はすぐそこ、地面のすぐ下まで来ているのに。
冬の少しだけ寂しい気分と、
春を待ち望むわくわくした気持ちが
入り混じる今の季節の空気感に
とてもよく似合う展覧会をご紹介します。
仁志出敬子
コンピューター・グラフィック展
~心の中の生き物たち~
2月5日(木)~2月22日(日)

動物たち(時々擬人化されていたりします)や、
現実にあるもののようで
どこか非現実的な物たちを、
優しい色使いとユニークな画面構成で描く
仁志出敬子さんの展覧会です。
仁志出敬子さんはこの方です。

まず、「コンピューター・グラフィック」というと、
もしかすると緻密で、メカニックで、先鋭的な作風を
イメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが
仁志出さんの作品は「コンピューター」を
意識させることのない、温かで優しい印象です。
「そうですね、わざと手描きっぽくしている
ところはあります。
パソコンでなめらかな線を描くというのは、
相当熟練していないとできない技術ですね」
コンピューターを習い始めたのは、今から18年前という
仁志出さん。
デザインやテキスタイルのお仕事をされていた関係も
かねて習得された技術ですが、
「コンピューター」を使って作品制作をするということに
特別な意識はなく、
ただ制作に必要な道具として捉えておられるようです。
「パソコンは機械の一種ですよね。
いびつなものを修正できたりもしますが、
パソコンだからといってきちっと線が描けるわけでは
ないので…。
作品をご覧になった方に『切って貼ったんか?』と
訊かれることもあるんですけど(笑)
私自身はこういう描き方が好きなので」
そして、実際に作品を見ていただくと
否応なく惹きつけられるのが、
そこに描かれた、可愛くて、シュールで
不思議な世界です。

「よく『この絵には何か物語があるの?』って
訊かれたりするんですけど、
物語があって、それに絵をつけているんじゃないんです。
最初に視覚的なイメージがあって、絵を描きます。
ストーリーは後からついたりすることもありますが」
“こういうものを描こう”と、頭で考えて決めるより
心に浮かんだ視覚的なイメージを着想にされるという
仁志出さん。
たとえば、こちらの「心の中の生き物」というタイトルが
ついた一連の作品は、
浮かんだイメージをクロッキー帳に描きためておき、
何年か経って掘り起こしたものが描かれています。

物語から生まれる絵ではない。
でも、
「この絵は何かの物語を表わしているんじゃないか…」
そう推測したい方の気持もわかる気がする
というぐらい、
仁志出さんの作品は本当に、
見れば見るほどユニークで興味がつきません。
描かれている動物や人物が、ファンタジックでありながら
互いに絶妙な距離感を保っていることで生まれる
飄々としたユーモアのセンス。
現実からすれば突飛な光景が描かれているのに
絵の中の生き物たちは「いたって平常心」であることが
昔読んだ
“不思議の国のアリス”の世界を思い出させます。

―(笑)面白いです。なぜ動物たちはこのような形に…。
「“メビウスの輪”って、立体的に面白いと思って。
あと、“クラインの壷”ってありますよね。
そういう感じを作品に取り入れたくて。
輪の中に描いたのは、まあ
“うさぎとねこが永遠に追いかけっこをしている”
というか…(笑)」

―これは、左下の人物が“狼男”に
変身している最中かなと思ったのですが。
「いえ、イメージでは
“ピーターパンが影を身に着けている”
みたいな感じだったんですけど…」
―影ですか。そのただならぬ様子に
周りの動物たちも反応していますね。

―木になっている人物もインパクトがありますが、
周りに描かれてあるものも不思議です。
室内は夜のようなのに、窓の外は昼に見えたり。
あと、右側の大きなものさしとか、
左の壁から出ている足とか。
「そうですね…ものさしはあの、やはり背が伸びるということで…(笑)足は、ここにピンクのものが欲しかったんですけど、こう、足があったほうがいいかな…?と(笑)」
―(笑)
派手な見た目で注意をひく形ではなく
画面の細部に目をこらすほど、
じわじわとおかしさがこみあげてくるユーモアを
そなえた仁志出さんの作品たち。
「おかしいですよね。描いているときは別に
笑いを取ろうと思って描いていないんですけど…。
でも、自分でも笑えてきます(笑)」
コンピューターを使用し、独自の世界を描く
仁志出さんの作品群は、
わかりやすい形で「ジャンル分け」ができる
特徴をもたないため
これまで、様々な形に受け取られてきたそうです。

「『イラストレーターですか?』と訊かれることも
あるんですけれど、
“イラストレーター”の定義がわからなくて。
辞書で引くと、
“絵本の挿絵を描く人”“商業的な絵を描く人”
というような意味があったのですが、
この作品は、売るための絵ではないので…」
また、絵の中に登場する動物や人物やものの
大きさが現実とは異なっていたり、
いわゆる「遠近法」に沿っているといえない形で
あることについて、仁志出さんは、
「みんな対等に描いていて、絵の中のどれを強調
したくてというのが、あまりないんです」
と言われます。
あくまで私個人の感想ですが、
その感覚は、仁志出さんがデザインや
テキスタイルの制作を手がけられてきたことに
関係があるのかもと思いました。

最後に、来場される方にメッセージをいただきました。
「具体的で、でも写実的ではないという世界ですので
現実の固定観念にとらわれないで見てほしいと思います。
展示のタイトルにもある“心の中の生き物”として」
インタビュー中の仁志出さんの言葉に
反するようですが
私が仁志出さんの作品を見て連想したものは
「昔の児童書の挿絵作家の作品」でした。
デザイン性に優れながら、温かさとユーモアをそなえ、
決して「物語の説明」にならない豊かな挿絵の世界。
その絵は、読み手の想像力を縛るものではなく、
絵があることで物語は謎を深め、奥行きを増します。
観る側が心を開いてじっと見つめた分だけ、
中にある豊かな世界を教えてくれる、
そんな仁志出さんの作品世界をぜひ会場で
心ゆくまで時間をかけて
ご覧になっていただきたいです。

(仁志出さんの旦那様は2013年にこのギャラリーに出展していただいた仁志出孝春さんです。「ご主人様は作品を見て何と言われますか?」との質問に「こんな発想がいったいどこから来るのか不思議だ、って言います」)
(2月12日(木)・2月17日(火)は休館日です)
Posted by わたむきホール虹 at 18:36│Comments(0)
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