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 › わたむきホール虹ブログ › 美術ギャラリー › 【開催中】田中 千野 水墨画展

2014年09月10日

【開催中】田中 千野 水墨画展

みなさん、こんにちは
季節はすっかり秋なのに、
まだまだ空模様には油断がなりません。
先日の甲賀地域、また日野町にも襲来した
豪雨について、被害を受けられた皆様に
お見舞い申し上げます。
このところの突然の天候変化、予想を超えるものが多く、
過去にこんな経験がないので戸惑ってしまいますが、
皆様どうかお気をつけください。

さて、本日は
美術ギャラリーの新しい展示のご紹介です。

田中 千野 水墨画展
~古典からイラストまで
水墨画と工筆画展~

9月4日(木)~9月21日(日)

【開催中】田中 千野 水墨画展

学生時代に日本画を学ばれた後、
結婚後、不思議な縁に導かれて、
中国の古典をルーツとする水墨画などを
制作されるようになった、
田中千野(ちの)さんの展覧会です。


作品の内容とその雰囲気から驚かれる方も
いらっしゃるのですが、
田中さんはまだ30代の女性画家です。
今回、田中さんのお写真は掲載できないのですが
そのかわり、ぎゅっと内容の詰まったお話を
たっぷり聞かせていただきました。
さっそくお楽しみください!


今回の展示では、まず会場中央のテーブルに
置いてあるこのようなものが目を引きます。

【開催中】田中 千野 水墨画展

四方が10センチ足らず程の小さな画帖に
描かれた細かい画。
中身を取り出し、立てて飾ると
ミニチュアの屏風のように見えるユニークな作品です。

じっと見ると、描かれてあるもの自体もユニーク。

【開催中】田中 千野 水墨画展
「虎」の顔だということなのですが、
表情やデフォルメの感じが妙に面白く、
味わい深いですよね。

(田中さん) 「これは“李朝民画”といって
朝鮮の李朝の時代に描かれた画の形です。
基本的に、家を装飾するという実用的な
目的で描かれたものなので、
なんというか、普通に画を描く人の基準とは
ちがう感じなんです。」


―普通とは違う。どういうことでしょう?―

「たとえば“人にこう思われるんじゃないか”とか、
上手い下手とか、気にしていないというか・・・。
この画を見てください」
【開催中】田中 千野 水墨画展

―これは何ですか?―

「麒麟(きりん)です。動物園にいるほうではなく、
想像上の生き物の・・・。」


―いくら“想像上”の生き物とはいえ、
これは相当に自由奔放ですね・・・ー


【開催中】田中 千野 水墨画展

「なので、民画を描いていると気楽な
気持ちになれます。
それが楽しいところですね」


中国~朝鮮~そして日本に伝わってきた
という説がある民画。
特に作家の個性や作品の固有性を重要視
するものではなかったのか、
画の描きかたに加え、描く手順までも
こと細かに伝達されたのだそうです。


画家として、かつての中国、朝鮮の地と
見えない糸でつながっているかのような
田中さんの世界。
お聞きするほどに興味深いことでいっぱいです。

【開催中】田中 千野 水墨画展

「これは中国の古画の臨画(りんが=模写のこと)です。
昔の作品の技術を学ぶ意味で制作しました」


絹の布の上に、近づいてみても驚くほどの
線の細やかさで描かれた臨画。
その筆の確かさに見とれると同時に、
私には遠いものに思える中国の古い画を、
田中さんはとても近しく感じておられるのだと思います。


古典の画法をなぞっていくのは
「どこか、昔の画家に挑むような気持ち」
だと仰る田中さん。
クラシックの作品に挑む指揮者や演奏家のように、
時空を超えて作者と直接、何かやりとりをするような
感覚なのかもしれません。



ストイックな研鑽の一方、画とのこんな付き合い方も。

「あの、“酒に合う画”というのもありまして。
私は酒が好きなんですけれども、
この画を前に、主人と飲んだりするんですよ」


【開催中】田中 千野 水墨画展

「“富貴図”といって、牡丹を描いている画ですが
『富み栄えよ』という意味がありますね」


―いや~、楽しそうですね。
そんな贅沢な画の楽しみ方があるなんて―


「楽しいですよface02“李朝膳”(李朝時代に使われた
一人用のお膳)を整えたりなんかして」


画を眺めながらお酒を飲む。今回の取材で
教えていただいた素敵なことのひとつです。
これはぜひ真似してみたいと思います!





そしてお話は、今回の展覧会の
タイトルに挙げられている「水墨画」へと
うつっていきます。

【開催中】田中 千野 水墨画展


「実は昔、ずっと水墨画が嫌いだったんです。
長谷川等伯や雪舟など有名な一部を除けば、
元気のない、しょんぼりした画ばかりに思えて、
自分は一生やらないと思っていました。」


それが、20代半ばでとある中国のいい作品を
見て、認識が変わったとのこと。
さらには、ちょうど同じ頃にご結婚されるのですが、
出産に加え、ご家族の病気が連続して重なるという
事態に見舞われ、
制作に時間の取られる日本画が描けなくなって
しまったのだそうです。

「私は描かないと気が塞いでしまうので、
何か描いていたかったのです。
水墨画なら日本画よりも手軽に、短時間で
画を描くことができました」


【開催中】田中 千野 水墨画展
(六つの瓢箪で「むびょう=無病」。
ご家族の健康を祈る気持ちが込められています)


「水墨画をはじめてから、自分が昔から好きだと
思っていた“日本画”が、実は日本画ではなく
“水墨画”だったことがわかったんです」


「それに、子どもの頃住んでいた古い日本家屋
には、襖や欄間に中国の風景を描いた水墨画が
びっしりと描いてあったのですね」


お話を伺っていると、遠い道のりをへて、
田中さんがここに辿り着かれたのは必然のように
感じられてきます。


そして中国の水墨画に学ぶ田中さんの作品には、
「画」でありながらどこか書道を思わせる
筆運びの美しさと、空間のとりかたの妙があり、
画の中の線には常に“音楽”や“踊り”に通じる
リズムや緩急の変化が見てとれます。
その空間感覚と音楽的な運筆の印象には、何か、
“かっこいい”という表現が本当にふさわしいのです。

「ああ、書道は『紙の上の舞踏』と呼ばれているん
ですよ。
それから、中国の画家なんかは酒を飲みながら
描いたりするんです。その方がいい画が描ける
からと」


【開催中】田中 千野 水墨画展
(中国の恩師との“合作”。「菊の花を私が描いたら、先生が入ってきて周りを描いてしまったんです」。
まるでミュージシャン同士のセッションのような作品)



最後に、田中さんより
今回の展示に寄せてメッセージをいただきました。

「水墨画は展覧会に出すような作品から
身近な人に送る絵手紙まで、全てのものが
ちょっとした道具で描けてしまいます。
ですので、もっと水墨画に親しんでもらえると
いいなと思います。
特に、若い世代の人たちに、こういった形の
水墨画があると知ってもらって、
水墨画をやりたいという人が出てきてくれたらと
思います」


“最近はインターネットでも注文できる”という
軸装選びなど、画の世界には楽しみがつきない
ようです。
“水墨画” “中国や朝鮮の古い画”のイメージが
必ず変わる展覧会。
芸術の秋にぜひご来場ください。

(9月16日(火)・17日(水)は休館日です)


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Posted by わたむきホール虹 at 08:48│Comments(0)美術ギャラリー
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